第4章 …ねぇ。もしかして、泣いてる?
ずっしりと、そしてひやりと冷たい感覚が手に伝わる。
そのトロフィーには確かに、TRIGGERの名がしっかりと刻まれていた。
『…でも、総合優勝は逃した、んですね』
「おい!!なんだそれ!そこは普通、おめでとうだろ!」
「あっははは!君は総合優勝を狙ってたんだね」
実際には、そこまで高望みはしていなかったが…。それでも
『…視野には入れてましたよ』
今更、ぐちゃぐちゃに泣いている姿を見られた事が恥ずかしくなって来たので。照れ隠しをするように、唇を尖らせてそう言い放った。
「……はい」
天は、私にハンカチを差し出した。
そして私の隣に座って、語りかける。
「それでこそ、TRIGGERの…プロデューサーだと ボクは思う」
『!!』
涙を拭く手を止めて、思わず彼の横顔を凝視する。
『え…で、ですが、優勝出来たのは貴方達の努力があったからで』
「待てよ。あんた さっき言ったよな。優勝出来なかったのは自分の責任だって。
なんで優勝逃した場合の責任はあんたにあって、優勝出来た場合の功績は俺達にあるんだよ。そんなのおかしいだろ」
「楽の言う通りだ。俺達が優勝出来たのは、俺達4人が努力したからだろ?」
上手く言葉で説明出来ないのだが。
私の、胸の奥の奥にある 引き金が ひかれた気がした。
トリガーが引かれれば…後はもう、弾丸が 前へ向かって飛び出すだけだ。
性能の良い拳銃は、最高の安定性・高度な命中率を備えており。どんな獲物をも捕らえるという。
このTRIGGERというグループを、そんな最強の拳銃のようにしてみせる。
どんなターゲットも、彼らにかかればハートを撃ち抜かれてしまう。
そんな、最強のアイドルに。
「これからよろしくね。プロデューサー」
「あんたの事認めてやる。だからこれからも頼むぜ、プロデューサー」
「これから一緒に仕事出来るの、楽しみにしてる。よろしく、プロデューサー!」
今日、TRIGGERがブラホワで優勝した。
今日、自分でも引くぐらい職場で号泣した。
今日、彼らが私を認めてくれた。
そんな今日は多分、記念すべき日だ。
『…こちらこそ、よろしくお願いします』