第4章 …ねぇ。もしかして、泣いてる?
ビシっと衣装に身を包んだ彼らは、さすがに圧巻だ。
楽と龍之介は黒を基調とした物で、天はその真逆の白。
モノクロームのアンバラス感が 新曲ともマッチしている。業者とギリギリまでデザインやコンセプトを煮詰めた甲斐があった。
「重いな」
『重厚感が欲しかったので、良い生地を使ったら重くなりました。本番でのダンスが野暮ったくならないように、普段は重りを付けて練習しましょう』
「お前ぐらいだよ、俺に野暮ったいとか言う奴は」
「はは。でも楽の衣装は一番重そうだね。俺がそっちじゃなくて良かった」
龍之介の言う通り、デザインや重さはメンバーによって異なる。
『!』
私は天の足元に違和感を感じて、彼の足元にしゃがみ込む。
「…短い?」
『はい。…少し』
私はポケットからメジャーを取り出して、何センチ裾を伸ばすか計算する。
『…そういえば貴方は成長期でしたね』
少し前のプロフィールに載っていた身長を参考にして発注をかけてしまっていたのだ。
「そういえば、プロフィール用に測った時より身長伸びてるような気がするな。天は」
「気がする、じゃなくて伸びてるんだよ。10代の成長期なめないでよね」
勝ち誇ったように天は言った。
『…あまり若い内に、激しい運動をし過ぎると 身長は止まってしまうらしいですよ』
「……どんまい」
「……ファイト!」
『………』
「その哀れみの目をこっちに向けないで。ボクはこれからも伸びるから大丈夫だよ」
私達3人の同情の瞳に、イライラした天の怒声が飛ぶ。
しかし、こんなところで遊んでいる暇はない。私は早く業者に衣装のサイズ変更の依頼をかけなければ。
これくらいの裾直しのレベルなら、本番までには優に間に合う。