第15章 俺…もしかしたら…、ホモなのかもしれない!
俺が移動してすぐ、天と楽が何やら小声で会話を始める。
俺は俺で、春人との会話に夢中で 後ろの会話までは拾う余裕がない。
「おい 天」
「なに」
「どうして龍を、適当な理由で丸め込んだ?
はっ。何が “ 人として ” だ。これみよがしに2回も言ってたな。
龍が春人の話をしてる時の目を見れば、そんな類の気持ちじゃねぇ事ぐらい、お前にも分かっただろ。
もし龍が アイツの事を恋愛対象として見てるって自覚したら…
お前、何か困る事でもあるのかよ」
「べつに。深い意味なんてない。あの不安定な状態の龍を放置すれば、仕事に影響しかねないと思っただけ。
それに楽だって、ボクの話に乗っかったんじゃないの?
ボクの事よりも、楽の反応は酷いものだったよね。龍の気持ちを聞くなり、落ち着け落ち着けってさ。どうしてキミがあそこまで焦っていたのかは、あえて聞かないけど。
ふふ。慌てふためくキミの姿はなかなか滑稽で笑えたよ」
「くっ…!!おま…」
「ふん」
「春人くん!!」
俺は、運転席と助手席の間から、ぐいっと顔を出す。
『は、はい?』
今の俺の、この気持ちを。
「俺、俺は…!ホモじゃなかったんだ!!」
『……それは、おめでとうございます』
どうしても君に伝えたい。
「それから、俺は、君の事が大好きなんだ」
『!!』
彼は全く顔色を変えなかったけれど、キーシリンダーの穴に鍵を刺すのに苦労している。
ようやくキーが刺さると、当たり前のようにエンジンがかかる。
エンジンがかかった音を聞いて、彼はようやくこちらを向いて 言った。
『ふふ。私も、貴方の事が大好きですよ』
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