第93章 選んだのは、こういう道だろ
翌日。まずは八乙女社長に話をするべく、彼の元に訪れた。そして、姉鷺にも同席してもらう。
昨夜考えた順序通り、なるべく丁寧に話を進めていく。
Re:valeが独立するに至った過程。了に、私がLioであるとバレていたこと。
そしていよいよ、最も重要な部分の説明に入る。
『実は、了と取引をしました』
「取引だと?」
『えぇ。ですが ご心配なく。内容は、ごく個人的なものです。
私は今日から、ツクモの人間になります』
「!!」
「そ、それってどういうこと!?アンタまさか」
『私のこの手で、TRIGGERをトップアイドルとして昇華させられなかったこと。誠に、申し訳ありません』
頭を下げる私を前に、2人は口を開けて固まった。
やがて、静まり返った部屋に宗助の笑う声が響く。
「ふ…ははは。そうか。お前がTRIGGERの代わりに、ツクモに行くか。なるほど良くやった。これで私達がツクモから圧力をかけられることもなくなるわけだな」
『はい。その通りです』
「ちょ、社長!本当にそれで良いんですか!?」
取り乱す姉鷺に、彼は淡々と言葉を返す。
「良いも何も、私とこいつが結んだ契約はそういうものだっただろう。TRIGGERをトップに押し上げる為に、手段は選ぶな。それが、たとえ自分を犠牲にすることになっても」
「ですが…!」
「それに、こいつの顔を見てみろ。私達が何を言ったところで、結果は動かん。とっくに腹は、決まっているんだろう」
鋭い彼の視線に、私は薄く笑って頷いた。
『短い間ですが、お世話になりました。ここを離れる許可を下さったことにも、心からの感謝を。
TRIGGER、そして御社の歩む道が幸多きものとなるよう、遠くから祈っています』