第68章 あなた…意外と馬鹿なんですね
「……あちらのベンチは、随分と盛り上がっているようですね」
『きっと本気だからこそ、あそこまで熱くなるのでしょう。私達も負けていられませんね!』
「ちょっとあなた。浮き足立つのもいい加減にして下さい。あなたは、そんなふうにキラキラ笑う人間ではなかったはずです!以前はもっと淀んだ目をしていたでしょう!」
『え、失礼過ぎません?』
「とにかく、皆さん。さっき私が言った事を頭の片隅に置いておいて下さい。
あの様子では、いつ、どんな暴挙に出てもおかしくない」
一織は、目を鋭く細めて相手ベンチを見やる。その真剣味に当てられて、メンバー達は息を飲んで頷いた。
私はというと、そんな一織の両肩に手をぽん と置き。真正面から彼を見つめて告げた。
『一織さん。そんなふうに人を疑ってはいけませんよ。まして彼らもスポーツマン。正々堂々と戦ってくれるに違いありません』
「もうやめて下さい!私は、これ以上そんなあなたを見たくありません!」
『??』
「あー…ごめんなぁ。一織は、あんたに憧れてたからさ」
『憧れ?何だか気恥ずかしいですね。私のどんなところを、そんなふうに思ってくれていたんでしょう』
「生けとし生きるもの全てを疑ってかかるみたいな生き様だって言ってたぜ?」
「兄さんっ、それはオフレコでお願いしますと言ったじゃないですか!」
「あ。あと、人の弱みを見つけるのが異常に上手いところと、その弱みに躊躇なくつけ込む非情さも好感度高いらしい」
『そんなポイントで上がった好感度など、こちらの方からリセットしてやりますよ』