第7章 どうやって僕達を、楽しませてくれるのかな?
台本を一旦テーブルに置いて、楽もテレビに目を向ける。
「Re:valeは本当に忙しそうだな」
「ボク達も、すぐに同じくらい忙しくなる」
天はそう言うと、真剣にテレビに向き合った。
今日は、Re:valeの新曲発表の日。このテレビで初めて蔵出しされるのだ。
彼らの歌う曲は、そのほとんどを千が作詞作曲している。
同じ歌の作り手として 尊敬している部分も大きい。私も体ごとテレビへ向け、集中する。
曲名は……“ Spring ”
??随分と季節外れだ。
いよいよその新曲が、ベールを脱ぐ。
————
千
「ハルトともに現れた。美しい我が君。
信じないよ
君がもう既に誰かのものなんて」
百
「無邪気な笑顔、真剣な横顔、大人の遊び。
いつのまにか戯れが
本気に変わってた」
千
「深夜に鐘の音は響かない」
百
「だって君は お姫様なんかじゃないんだから」
百・千
「どうしても君が欲しい。
待ってるよ。君の心が変わるのを。
そしたらほら、
新しい世界を見せてあげるから」
————
妖艶に歌い上げる千を見ていたら。
あの夜がフラッシュバックする。
彼は、今と同じようにその髪を揺らしていた。
…私の 上で。
あぁもう、新曲披露歌番なんて見るんじゃ無かった。
TRIGGERの面々が、口々に感想を言っていく。
「…Re:valeにしては、珍しいパターンの曲だね」
「でも、相変わらず上手い。惹きつけられるよ」
「たしか作詞作曲担当してんって、千さんだよな。おい春人。こういうのってやっぱり自分の体験とかを元にして作るもんなのか?」
『…はぁ…まぁ、そういう人も…いるでしょうね』
私は彼らから、自分の顔色を隠すように腕で顔を覆った。
「?おい、なんかお前、顔赤く無いか?」
「え?風邪?大丈夫か?」
「体調管理はしっかりしてよね」
こんな物を見てしまっては。明日、どんな顔をして千に会えばいいか 分からなくなってしまったではないか。