第6章 この子はオレとユキのお気に入りなの!
一通りの挨拶を終え、私達は撮影スタジオへ向かう。
2人の少し後ろを歩いている私は、背中に向かって話しかける。
『…さっきはありがとうございました。なんていうか…お2人は、優しい。ですね』
頭の後ろで手を組んだまま、百はくるりと振り向く。
「え?今ごろ気が付いたの?あはは!春人ちゃんってば遅ーい!」
セクシーなグレーヘアーを翻して、千もこちらを振り返る。
「君の事は、何があっても僕達が守ってあげるよ」
「ッキャー!ダーリンったら素敵!今のもう一回言って!」
「ふふ。モモの事は、僕が必ず守ってあげるよ」
「やーんヤバすぎ!もう抱いてー!」
なんだか、このやり取りも見慣れてしまって新鮮味が無くなって来たな。
とりあえず、手帳には…
“ Re:vale 優しい ” と 書いておこう。
「まぁ冗談はそのへんにポイって置いといてー。今日の撮影は、いつもよりも気合い入れないと!
ねっ、ユキ!」
「そうね。僕達のカッコ良いところを 春人ちゃんにしっかり見てもらわないと」
私にそんな所を見せたところで、彼らに一体どんな得があるというのだろうか。
むしろ利益を得るのはこちらの方だ。
王者Re:valeの、雑誌撮影をこんな間近で見られる機会はもう無いだろう。
「んでもって!TRIGGERのプロデューサーより、オレ達Re:valeと仕事する方が面白そう!って思ってもらう!」へへっ
「うちの事務所との契約書も持って来ているから、いつ心変わりしてくれても大丈夫だよ?」
『……そんな事、考えてたんですね』
2人は私の方を見て、にこっと笑う。
まったく…。彼らの言う事は、何が嘘で何が本当か分かったものじゃない。
気が付けば、撮影スタジオへと続く扉の 真ん前まで来ていた。
「よっしゃ!行きますかー!」
「うん。今日も頑張ろう」
その両開き扉を、2人は左右それぞれを押して。スタジオへと足を踏み入れた。