第6章 屈折プロポーズ
「へーへー、みっともない告白で悪かったですね~」
「そんな事はないぞ、私の許婚に比べたら100倍はマシだ」
「へっ!?お前許婚なんているの!?」
「親が決めた奴なんだけどな。これがまた面倒で……」
零落れかかった家を再興させる為に組まれたマルフォイ家との婚約。しかも厄介な事に両親が親友同士で、とドラコも生まれた時からの付き合いだから、2人は所謂幼馴染だったりする。
いつも口喧嘩ばかりしていたけど、仲が悪いわけではなく、むしろ本物の兄妹のように接してきた。
「きっとあいつの事だから、今頃は金に物言わせて私の事を探してるだろうなぁ」
「なに?お前そんなボンボンと結婚したいの?」
「まさか、どうにか破談にする方法を探しているくらいだ!」
ドラコとの婚約を知らされたのは、ホグワーツに入学する直前だった。自身、純血主義を嫌っていたので、この婚約には断固反対していた。
――が、特に解決策が浮かばないまま、今の今まで来てしまった。
「あー、何か破談にする良い方法は無いものか……」
「そんなの簡単だろ」
そう言うと、何を思ったのかエースは、の片手を取り自分の胸に当て、もう片方の手をに差し出すと、瞬き1つせずにを見つめた。
「……オレの鼓動が、聞こえるか?」
「エース……?」
いつもよりも、少し低い声でエースが囁いた。エースの胸に抑えられた手から、わずかに鼓動が伝わってくる。
「元の世界になんて戻るな。この手を取って、ずっとオレの傍にいてくれ」
先ほど何回も動画で観た激しさは無いが、真剣で熱を帯びたエースの眼差しに、は一瞬鼓動が止まった。
思ってもみなかった突然の告白にが固まっていると、差し出されたエースの手がの額に伸びてきて、またしてもピンッと中指ではじいた。
「バーカ、冗談だよ。じょ・う・だ・ん」
「……なっ!」
「もしかしてときめいちゃったとか?ダッセー、男の免疫無さ過ぎ」
先ほど散々笑いのネタにしたお返しとばかりに、をからかうエースだった。
だがその翌日マジカメに、謎の人物からエースのこの恥ずかしい告白動画を上手い具合に編集され、投稿される事になるとは、この時の彼は知る由も無かった。