第2章 センラ
「その子達はな、みんな、一括りのものでしか俺のことを見てはくれてなかったんよ。歌い手の中で一番有名なグループにいる人。その認識でしかなかったから。センラ自身をみて、良いって言ってくれてたわけやなかったんやなぁって。なら、別に俺じゃなくてもえぇやん。うらたんだって、まーしぃだって、坂田だって。あの子達にとってはきっと、誰だって良かったんよ」
寂しそうに目を細めて彼は笑った。思わずその背中に腕をまわして、熱い体温の彼を抱きしめる。互いの皮膚の温度がよくわかるくらい体を密着させた。
「proは俺だけをみてくれる、自分だけの専属家政婦さんってうたっとったやろ?なのに、来る子は今、自分の周りにいる子達となんら変わらへんかった。結局、知名度や金の有り無しばかり気にしぃて。俺に興味を持ってくれる子なんか、一人もいぃひんかったわ」
最初にここを訪れた時のセンラさんを思い返した。今思えば、彼らしくない態度。いくらこちらが無礼を働いたからと言って初対面の自分に冷たく当たるような人ではない。
「俺かて、チェンジしたくてしてたわけやない。自分に興味をもってくれる子が欲しかっただけなんに。要注意なんて書かれて、それまで溜まってた鬱憤が爆発してな。そんで香澄にきつく言ってもうて。あの時はほんま、嫌な思いさせてごめんなさい」
しょんぼりと、主人に叱られた子犬のように目を伏せる。
「気にしてないので…あの」
私の体を抱きしめる力が心なしか強くなった。彼からの何かしらのサインのような気がして、見上げてセンラさんの様子を確認する。しかし、顔をそらして、重ためな前髪もあわさって、表情がわからない。