それでも私はかの君を愛してる【twst・ハリポタ】
第7章 核心には届かない
リドルのオーバーブロットから一夜が明けた。
昨日の夜はオンボロ寮の自室には戻らずに、ハーツラビュルの自室で休んだ。
灯台もと暗し。
まさかあの場から姿を消した自分が、ハーツラビュル寮内にいるとは誰も思わなかっただろう。
どうやらあの後、1年生組がスノーを探して各寮の知り合いに連絡を入れまくっていたようだが、これは作戦勝ちだ。
皆が午前中の授業に向かったのを確認すると、スノーは部屋からのんびりと出る。
規則が厳しいハーツラビュルだからこそ、サボって寮に残っている生徒はいない。
シンっと静まり返った寮をのんびりと歩く。
ルールこそ面倒ではあったものの、居心地のいいハーツラビュルはよく寝泊まりしていたものだ。
今はオンボロ寮の自室にはいることが多いが、この世界に来たばかりの頃はハーツラビュルとポムフィオーレしか足を踏み入れられなかったというのに。
"女の子なんだから気をつけないといけないよ?
なにかあったらすぐに僕に言うんだ、いいね?"
赤い小さな彼は最初から優しかった。
"そのクマはなんだい!
学園長からの仕事は夜でないといけないのかい?
無理をするのはよろしくないよ!"
赤い小さな彼はいつもスノーの事を心配する。
"スノーのいれるミルクティーが1番美味しい"
赤い小さな彼はレモンティーよりミルクティーが好き。
スノーは思い返しながら、ふふっと笑んだ。
彼は名を呼べないと告げたら悲しむだろうか。
別に理由を聞かれれば素直に答えるつもりだ、隠すつもりは無い。
その結果、彼がどう思うかはわからない。
彼はスノーの仕事を知ったらショックを受けるだろうか。
化け物退治とはいえ、元が人であったものを殺すスノーを知ったら、軽蔑するだろうか。
あのままスノーが間に合わずに、彼が化け物へと成り果ててしまっていたら。
彼を殺す事になっていたスノーを、恐れるだろうか。
もしかしたらこれまでの日常が崩れるかもしれない。
そう思うと、ほんの少しだけ寂しい気もした。