それでも私はかの君を愛してる【twst・ハリポタ】
第6章 赤の王がその名を汚す
リドルに向かってぎゃあぎゃあと騒ぐエースに周りが目を取られている隙に、スノーはそっとクロウリーに近寄った。
青春だなぁとしみじみとやり取りを眺めているクロウリーにそっと声をかける。
「私はこの辺で失礼します。
報告書は明日の昼休みにでも学園長室に。」
「ご苦労さまです、スノーくん。
とても助かりましたよ。
報酬は多めに入れておきますから、私優しいので!
…話していかなくていいのですか?」
誰と、なんて聞かなくても察している。
だがしかし、名前で呼ばれたいと叫んだリドルと、今話す気にはなれなかった。
「えぇ…ほとぼりが冷めたら、またいつも通りの日常を過ごしますよ」
それはリドルの気持ちには応えられない、という明確な拒絶だった。
呼べるわけが無い。
"トム・マールヴォロ・リドル"
リドルは、本人が捨てたとはいえ、我が君の名だ。
彼が呼ばれることを嫌って捨てた真名だ。
「そうですか…。
では、ゆっくり休んでくださいね。」
クロウリーもその事情を知っている。
だからこそ、何も言えなかった。
スノーがあの人をどれだけ大切に想っているか、どれだけ今でもこがれているかを知っているが故に、何も言えなかった。
スノーは緩く頭を下げると、皆に囲まれたリドルをチラッと見た。
泣きながら笑う彼は何かが吹っ切れたようで、とてもキラキラして見えた。
その姿にフッと笑みを零すと、スノーは杖を振る。
姿くらましでその場から消える瞬間リドルと目が合ったが、気づかないふりをした。
「僕は… スノーに嫌われてしまったんだろうか…」
ポツリとリドルが呟いた。
「そ、そんなことないですよ!」
ユウが慌てて否定するが、自分に声をかけずに立ち去ったスノーにショックを隠しきれないリドルの目には涙が浮かんだ。
「あー!もう!
何でもかんでも泣けばいいってもんじゃねーからな!」
エースがバツ悪そうに、ガリガリと頭を大きく。
あの時はカッとして、売り言葉に買い言葉で、スノーにリドルは距離を置かれている、なんて発言したがそんなことは微塵も思っていない。
距離を置いている人間が、あれだけ彼のことを庇うように自分達に言い聞かせるわけがない。
だか自分が吐いた言葉は思いのほか彼を傷つけたようで、なにやらバツが悪い。