第22章 月と馬
ー穂波sideー
なんだか、
するすると澱みなく話が流れていって
クロさんも交えて普通にお喋りになった。
蛍くんの時も、研磨くんの時も、
その賢さに乗せられてわたしはただ漂ってるみたいになってしまってる。
──「その、どの好きかわからなくなったのはキスした後?」
『ううん、連絡先をね、交換することにして、
でも蛍くんはわたしが連絡先をあまり交換しないのも想像?してて。
だけどわたしが、交換することにしたからかな、
僕のこと好きですよね?って言われて、それでちょっと考えたというか。
好きは好きだけど、どの好きだろうって』
「…キスしたあとは?」
『研磨くんにどんな顔して会えばいいかわかんないけど、
会いたくて会いたくて仕方なかった』
「…ん。なんで落ち着いていられたの?」
『…なんでだろ?蛍くんに宥められるのが、今回初めてじゃなかったからかな。
合宿の短い間で急激に近付いて、短い間にいろいろあったからかな…』
「…ま、いいや。 …ゲイじゃなかったね」
そんな風に話は流れていった。
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上りの電車に乗り変えて、
研磨くんとクロさんが降りる駅が近付いてきた。
『研磨くん、ごめんなさい』
「…ん。穂波さ、月島に言われて言わないでもいいかなって考えた?」
『…その方がいいのかもな、ってその時は思った。でも、研磨くんの隣にいたら無理だった。
それでそのあと、別れる覚悟がないなら言うなって言われて。
あと、まだ言わないでってお願いをしてくれた。
…多分、言い方変えないとわたしが絶対言うって思ったんだと思う。
…でもやっぱ、今この通り、話すことを選んだ』
「…ん。多分おれはそっちの穂波が好き。
いいよもう、この話おしまい。 …明日家行っていい?休みだし。」
『うん。夕方からレッスンだけど… あ、お母さん達はいま茅ヶ崎にいる』
「…え、じゃあ今日荷物置いてから穂波ん家いく」
『えっ、今日?』
「…なんで、ダメなの?」
『いや、疲れてないかなって。家でやりたいこととかないかなって』
「穂波と家にいたら疲れとれるし。ゲームはもってけば良い」
『…うん。じゃあ、是非。来てくれると嬉しい』