第21章 スイカ
ー穂波sideー
洗濯室に向かう途中、
蛍くんの後ろ姿を発見したので、
つい声をかけてしまった。
でも、食堂に行くまでにみんなの洗濯物を干さないと。
勝手に話しかけて勝手にその場を去り、走って洗濯室まで来た。
〜♪
洗濯物をカゴに入れていく。
洗濯を干すのは家事の中でも特に好き。
全部取り出せたかな?
洗濯機の中を確認して、よいしょとかごを抱えようとしたとき、
「あのー…」
『ひゃっ……… あぁ、蛍くん。 びっくりしたぁ』
「これ、靴下。拾ったんで。 …じゃ」
蛍くんが靴下を渡してくれる。
そしてスタスタと去っていく。
えっ
『待って!蛍くん!』
「…はい、何ですか? …朝からデートでもしてたんですか?首にはなんか紅いマークついてますし。
僕なんかと話してちゃだめなんじゃないですか? …っていうか…………」
早口で、何やらよくわからないことを捲し立てられる。
そして昨日、綻んだ部分はまた固く閉じられてる。
言葉遣いも、表情も。
『…待って、蛍くん。よくわかんないけど、ちゃんと話した方が良いんじゃないかな。
洗濯干すの付き合ってくれない? …あ、干さなくていいから、そばにいてくれればいいから』
「…はぁ …はい、わかりました」
昨日教わった洗濯干しスペースに一緒に向かう。
『…えっと、まず靴下!ありがとう。嬉しい。
わたしも今朝探そうと思ってたのに,すっかり忘れちゃってて。昨日も本当にありがとうね』
「…あぁ、はい」
『………』
「………」
『…それで、朝からデートについて』
「………」
『京治くんといたのを見かけたのかな?』
「…梟谷の人」
『何がデートで何がデートじゃないか考え出すとよくわかんないけど、
今朝のはデートじゃないよ。わたしと京治くんは本仲間なの』
「………」
『1回目の合宿で会う前にね、丸の内の書店で………』
書店での話をかいつまんで話してるうちに洗濯干しスペースに到着。