第21章 スイカ
穂波さんはトイレに行くというので、
さすがに校内では明るいし迷わないだろうと僕は先に行くことにした。
一緒にいるとこ見られたら、いろいろめんどくさそうだ。
菅原さんとか、音駒の主将とか、梟谷の主将とか…
認めたくないような…
でも認めてしまった方が楽なような
自分の中に確かにある感情。
それについてはひとまず置いておいて。
さっきの時間は思いの外、有意義なものだった。と思う。
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「ツッキー!どこ行ってたの? あれ?まだお風呂入ってないんだ」
部屋に入るや否や、
山口が駆け寄ってくる。
「うん、まぁちょっと。いろいろあって」
「…そっか」
「風呂入ってくる。起きてなくていいよ。おやすみ」
「…うん、わかった。ツッキーおやすみ!」
まだみんな起きてるみたいだったけど、
風呂上がったら寝てるだろ。
遅くなったからか風呂も貸切状態。
今日のことを思い出す。
さっきのことではなくて、
さっきのことが始まる前のこと。
山口が何か僕に言いたそうなのは分かってる。
音駒と梟谷の主将もだ、煽ってくるというか。
…兄貴を好きかと聞かれた。
好きだと答えた。
…兄貴
また頭がごちゃごちゃとし始める。
もう今日はいい。
考えるのやめよう。
さっきの穂波さんとの時間を思い出すと
心が軽くなっていく。
…ほんと、変な人。