第1章 出会い
ー穂波sideー
『お母さん、おはよう!』
「おはよう、穂波。
昨日に夜は家にいられなくてごめんねぇ。何もなかった?」
『ふふふーちょっといいことあったよ〜。
気になる子と初めて会話ができた。運天さんって呼んでもらえた。
また明日ね、って返せた。』
「えーなにそれ!まずそんな子がいたの?
気になるって気になるって?
って、質問だらけになっちゃうから、まぁいいや!
母さんは穂波のこと信じてる。
話したいこと話すべきことは全部話してくれるって。
いま話してくれた、ちょっといいこと。穂波らしくってすごくいい。
些細なことに聞こえるけど、ちゃんと喜びを受け取ってる。
それだけで母さんは嬉しい。」
『ふふ、どう気になるのかはわかんないんだけどね、
昨日気がついたら、その子の指をわたしの指でなぞってたの。
びっくりしたしびっくりさせちゃったけど、でもなんか、そこが重要なんじゃなくって、ただただ流れていった。
流されたんじゃなくてね、会話が、流れが、ただ流れた感じ?
無理な力がなくって、とっても気持ちが良かった。』
「そっかそっか。それは大事なことだ。
サーフィンしてるとさ、自然と繋がるからさ。
自然と繋がってると、そういう、歪みのない?いや歪みはあっていいんだけど、
人為的じゃない流れの気持ちよさ、心地よさには敏感になるよねぇ。
あー聞きたいこといっぱい。ひとつだけいい?
ね、一緒にサーフィンできそう?」
………笑
『可笑しいくらいサーフィンはしなそう。笑
できるできないはできると思うけど、できるできない以前にしなそう。笑」
「…ふーん。なんか、ますます気になっちゃうな。でもまた、聞かせて。
そろそろ出る時間でしょう?今日は火曜だからレッスンだよね。
何かあったら連絡してー」
『うん、ありがと!』
お母さんは、海みたいな大地みたいな人。
大好き。
サーフィンは車で行くから、送り迎え?っていうか一緒に行くけど、
通学の駅までも、レッスンの行き来も、基本自分で行くっていうのが両親のやり方。
わたしにはあってて好き。
今日も雨。
真っ直ぐに落ちる雨は綺麗で、色っぽくて
傘を投げ出して、雨に濡れたくなる。
でも我慢我慢。