第16章 獅子
おぉ、どういうことだろう。
…金曜日は朝から様子が少しだけおかしかった。
なにか考え事というか、
するべきことを考えているというか。
なんというか。
でもこう、気が滅入ってるとか疲れてるとかそういうんじゃなくて、
対策を考えてるというのがしっくり来るような、そんな雰囲気だったので
別段気にすることをせず、その思考の邪魔をしないようにしていた。
『おはよう、研磨くん』
研磨くんの前の席に鞄を置きながら挨拶すると、
ゲームから顔を上げてこちらをみる。
目の色と髪の色がよく合ってて綺麗。
『…髪の毛、似合うね。 ヨーロッパの少年みたい』
ブレザーを着ているから余計にかな、
そんな雰囲気が出てる。
「…ん」
『ふふ。綺麗』
「…虎に言われて」
『ん?』
「髪の毛どうにかしろって。貞子みたいでみんな見るぞって。目立つぞって言われて」
『うん』
「………」
切りたくないから染めたってことか。
どうしてこの色をチョイスしたんだろ。
冷静でいながらやっぱりどこかファンタジーの世界にいるなぁ研磨くん。
髪の色決めるとき、
ゲームのキャラクターの髪色選ぶときみたいな感じで選んだのかな。
なかなか、思い切りのいい色。
『いいね。とてもいい。好き』
「…ん」