第15章 さくら
『ふぇっ? …キス、うん、そういうこともあるよね』
「…笑 …周平にキスされたの?」
『にゃっ な、なんで?』
「…笑 なんでそんな焦ってるの。 かわいいけど」
『かっ かっ かわいいとか、今言う? ズルい』
「…笑 どもりすぎ。 …ズルいってなにが」
『………』
「…で?周平とはその時どうやって仲直りした?」
『…いつの間にか』
「ふーん」
『…………キスされて、驚いて、誤魔化されて』
「へぇ」
『こんなこと聞いてどうするの?』
「…別に。 データ収集」
『いやじゃないの?』
「おれが小6のときに中1のクロにキスされたって言われたら嫌?』
『へっ!? ん!? …えっと、ぅうん、いやじゃない』
「ブッ 笑 例えだから。 もしされてたらそれこそ喧嘩だよ」
『………。 え、じゃあ例えになってないよ、あ、なってるか…』
性別なんて関係ない
それに今のは幼なじみっていう括りの例え
「おれと出会う前のことだし、その上小6。いやじゃないよ。
いやかな、と思って言わないでいてくれたのも分かるから。
…反応がおもしろいからちょっとからかっただけ」
『……』
「いま穂波がおれのこと好きでいてくれてるってだけでいい」
『……』
「おれらもいつか喧嘩するかな」
『するかな。するよね。でも、仲直りしようね』
「うん」
『でもわたしたち恋人だし、誤魔化すのはやめようね』
「それは大丈夫。 穂波誤魔化すの下手だから」
『…それは否めないけど、研磨くんも誤魔化しちゃダメだよ』
「うん、まぁ何もかもはっきりさせる必要があるわけじゃないと思うけど。
必要のない誤魔化しも要らないね」
『…ん』
研磨くんには何もかもお見通しだ。
その上で、受け止めてくれてることに、
この上ない安心感を感じる。
…え、でもお見通しって。
なんで周平がキスしたって思ったの?
『…ねぇ、研磨くん』
「…ん?」
『どうしてキスしたって思ったの?』