第14章 blooming
あれから穂波ちゃんは何事もなかったかのように
いつも通りで、拍子抜けするというか、
そんなにまで俺は穂波ちゃんの心に入り込めなかったのか?って
逆にちょっとがっかりするほど。
まぁ俺も穂波ちゃんに会ってドキドキするとかそういう恋みたいな感情はねぇけど、
体温とか柔らかさとかそういうのはやっぱつい、思い出しちまうし。
にしても、もうちょっと意識してくれても良いんだけど。
あまりに普通だったから、一度そう冗談半分で言ってみた。
『クロさんはかっこいいよ。わたしね、恋に落ちやすいの。
男の子にも女の子にも、しょっちゅう恋してる』
頓珍漢な答えを平然と返してきたかと思えば、
『思い出すとドキドキするよ。
近くで見たクロさんの目も、
すぐそばで聞いた心臓の音も、きっとずっと忘れない』
だとか、なんかこっちが浮ついた気分になることを
下心もなんもなく ストレートな言葉にしてぶつけてもきた。
まぁそんな感じで、前から可愛いとは思ってたし、
良い身体してんなって、見てたし。
そういう意味でも、なにも変わってねぇのかな、とか。
なわけで、距離があくでも会話が変わるでもなく、
関係性に変化はない。
研磨はまぁ、あの日の帰りに話した感じで、
なんもかわらねぇ。
一番うるさそうだった山本も、
夜久か海か、研磨か…
だれかに何か言われたのか、特になんも触れてこなかった。
器用なやつではないから、
あれがあった日から数日はなんか様子おかしかったけど
俺と研磨や、俺と穂波ちゃんの変わらなさを見て、
山本なりになんか腑に落ちたのかね、とか。
バレー部以外のやつらもまぁ、
山本とほとんど一緒な感じっぽかった。
…そんなわけで、部活に支障が出ることもなく、ふつーに過ごせてる。