第10章 2012
鍵を開けて、穂波ん家に入る。
電気つけて…
なにする?
あ、暖房つけてって言ってたな。
薪ストーブなんてつけたことないし
…あれ?熾火ってやつ?
炭がじんわりと赤い。
そういえば家の中、そんな冷え切ってないかも
とりあえずいつも穂波がつけてる床暖房のスイッチをいれて
ストーブの前に行くと、小さい机の上に火の付け方の書かれた紙があった。
書いてある通りに、通気口を開けて
焚付けと小枝を入れて
風を送ったら小枝についた
小さめの薪を入れてしばらく眺める。
…穂波、レッスン前に帰ってきたのかな。
手を洗って戻ると、ダイニングの机にも置き手紙が。
【研磨くん、部活お疲れさま〜。
冷蔵庫にお惣菜があるよ。おでんあっためてね。
炊飯器にご飯も炊けてるかな?みてみてね。 穂波】
わ。やっぱり帰ったんだ。
…え、じゃあツトムくんのはなんだったの
帰ってからレッスンに来たの分かっててあれ言ったんだ、多分。
炊飯器を開けるとタコ飯が炊かれてた。
うわ、すごい美味しそう。
至れり尽せりじゃん…
母親代わりどころじゃないし。
20時にレッスンが終わるって言ってたから
帰るのは21時ごろかな。
おれらも寄り道してたから、もうあと30分くらいだし、待ってよっかな。
…一緒に食べたいかも。
ゲームしてよ。
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『研磨くん、ただいまぁ』
メールが入ってたから鍵を開けておいた。
穂波は鞄を置いて抱きついてくる。
肩には薄ら雪が乗ってる。ほとんど溶けてるけど
…冷たい
ぎゅっと抱き返す。
「おかえり、穂波」
穂波が手を洗ったり、着替えてる間におでんをあっため直す。
『あれ、もしかして研磨くんもこれから?』
「…ん。一緒に食べよ」
『…ん。嬉しい。 あーおでんのいい匂い〜』