第1章 出会い
孤爪研磨くん。
入学式で初めて見かけたときから
力の抜けた雰囲気と、
猫みたいな鋭い目が印象的な子。
クラスの誰かと休み時間とかに話しているのもみたことがなくって、
大体いつも携帯でゲームをしてるみたい。
だからつい目で追っちゃうことを説明できるような理由とかよくわからないのだけど、
でもそういうの別に必要ないよね。って心底思ってる反面、
なんでこんなに惹かれてるんだろう?っていう、その、パズルのピースみたいなものが、
気になってるのもほんとのほんと。
バレー部に入ってるってのも、なんだか不思議。
いつも、黒い髪の2年の先輩が部活前に呼びに来ていて、
その先輩とは入学前からのお友達なのかな、
一緒にいるときだけ、孤爪くんの表情が少し豊かになる。
そんな様子を遠くから眺めて過ごして、早二ヶ月。
日々大きな変化のないようにみえる孤爪くんの観察は、地味なようでとても楽しい。