第6章 層
「………ちょっと、福永すまんっ。腹がっっ」
山本くんがトイレに走っていく。
……………
福永くんは、一人でストレッチを始める。
……………
クロ「…穂波ちゃん、こういうのしたことある?」
研磨「…ちょっと、クロ」
『あ、はい。ダンスの後とかに』
クロ「福永の補助できる?」
『…あ!もちろんっ』
研磨「…………」
わたしは結構このストレッチの補助っていうのが好きだったりする。
なので嬉しい。福永くんはしなやかだし、どんな感じかな。
クロ「…それとも夜久と替わって、研磨につく?」
『へ?…え?…あ、いや福永くんが良いです?…ちょっと、何て答えたらいいんですか』
研磨「…こっち、おいでよ」
夜久「!」
『いやそんな、いやちょっと…刺激が強すぎるので…』
一同「?」
研磨「………」
汗をいっぱいかいた研磨くんのストレッチの補助なんてムラムラしちゃって、
今のわたしには絶対に務まらないっ…不純すぎる動機で断ってしまう。
『福永くん、お願いします。強さとか角度とか、いろいろ違和感あったらすぐ言ってね。
右脚の股関節が終わったとこだったかな?次は臀筋群?』
「…?こういうやつ」
福永くんの左脚を跨いで、右股と右足で押さえて固定して右脚のストレッチに取り掛かる。
『…ん。………まだいけるんだ……福永くんやっぱ柔らかいんだね』
クロさんたちがやってる順番に倣って、
後ろ側の筋肉をほぐして、反対の脚も同じように。
次はうつ伏せになって、前側の筋肉をほぐしていく。
よし。終わった。
………山本くんは結構な時間トイレから戻らない。大丈夫かなぁ
『お疲れさまです。……福永くん、動きから見て取れる通り、柔らかいんだね』
「………気持ちよかった」
『…ほんと?ちゃんとほぐれてよかった。…山本くん、大丈夫かな?』
「…俺、見てくる」
『…あ、お願いします』
みんなのストレッチが終わって、モップがけとか片付けをして、
部室へと向かうみんなと一緒に体育館を出る。