第6章 層
ー穂波sideー
『あー、もっともっと研磨くんと一緒にいたいなァって思ってた』
「………」
『□さんと初めて喋ったけど、楽しかったんだ。
…人のこと真っ直ぐに知っていけるのは好き。
……でも心のどこかで研磨くんといたいなぁって思っちゃって。
………失礼かなぁとか思いながら』
パイプを運びながら、ぽつぽつと半ば一方的に喋ってしまう。
「…穂波、今日この後は?」
『…ん?何にもないよ』
「…部活、2時間くらいしかやらないから。…見てく?」
『………』
いつもと同じようなんだけど、ちょっと声が強い。
□さんや周平に話した時みたいな声色に近い。
…ちょっと、怒ってる?
「………見てって?一緒に帰ろ」
急に、優しいような、切羽詰まったような声と表情になる。
『…研磨くん?』
「………」
『………うん、見てく。一緒に帰る』
「…ん」
ちょっといつもと違う研磨くん。
冷静な研磨くんだから、
きっと自分で自分の感情を把握したり、処理したり…してるのかな。
研磨くんのペースでいい。
執拗に話しかけずに、でも一緒にいれる間はみないふりもせず、
この感じを味わってみよう。
きっと、あまりないことな、気がするから。
残り数本のパイプを運ぶのは、静かに静かに行った。
教室に荷物を取りにって、
一緒に部室へと歩く。
「…おれ、部室寄ってからいくね。先行ってて?」
『…ん。でも、待っててもいい?ちょっとでもいっしょにいたい』
「…ん」
ジャージに着替えてきた研磨くんと体育館に向かう。
何を話すわけでもないんだけど、隣に居れるだけで幸せ。
それからさっきから、妙にドキドキする。
怖いんじゃなくて、高鳴る感じ。
なんだろう…
『…っふぅーーーーー』
「…?どうしたの?」
『なんでかドキドキが止まらなくって。深呼吸』
「…ふふ。じゃあ、行ってくる。上で見てる?」
『………あ、うん。……あ、手伝えること、ほんとにあるのかな?』
体育祭の後の部活なんて、疲れるだろうなって思った。
ちょっとしたことでも、お手伝いになるなら、と。
「…?……クロに聞いてみたら?」