第6章 層
体育祭の片付けをぼちぼちとする。
穂波がパイプを一人で運んでるとこに
さっきクロが言ってたサッカー部の主将が走ってくのが見えた。
重いでしょ、手伝うよ?
とか言ってるんだろ。
穂波は、屈託のない笑顔でお礼でも言って引き受けるんだ。
…………あーなんかモヤモヤする。
虎に声をかけられてテントを畳んでる間、ずっと気になってしまった。
笑って話しながらパイプを置いて、
またパイプのあるとこまで並んで歩いて、一緒に運んで…を繰り返してる。
ツトムくんとか遊児とは違う感じがする。
いやだな、って思う。
テントを片付け終えたと思ったら、次は隣のテントって…
…はぁ……
もう一つに取り掛かり始めた時、
ツンツン、と誰かの指が肩を触る。
振り向くと福永がいた。
いつもの飄々とした表情で、
穂波を指差し、テント片付け変わるよのジェスチャーをする。
ちょっと変な動きだけど…
「…ん。ありがと、福永」
福永っておもしろいんだよなぁ。いつも何考えてんだろ。
穂波の方に向かって歩く。
「穂波〜、お待たせ。テント、福永に代わってもらった。
あ、先輩ありがとうございます。おれ、残りやるんで…」
嘘ばっかり言った。
なんかいきってるみたいで変な気分。
いきってんのかな、おれ。
待たせてないし、福永の方から代わってくれたし、2年のこの人にありがとうとか思ってない。
『あっ、研磨くん。…□さんありがとうございます。残り、研磨くんとしますね。
サッカー、頑張ってください♪』
「っちぇー、俺もべつに穂波ちゃんとこのままいれるならなんでもするんだけどなぁ♪
今度サッカー見にきてね〜♪」
そう穂波に言うと
こっちに向かって走ってきて
爽やかな笑顔をおれにも向けてくる。
肩をぽんってされた。
余裕をみせたのかよく分かんないけど、いい気分はしない。
「…ごめん、なんか嘘いっぱいついた」
『…?』
「…別に一緒にするとか言ってないし、福永から代わってくれたし、
さっきの人にありがとうとか…思ってない」
『…ふふっ わたしは研磨くんを待ってたよ?』
「ん?」