第6章 層
『ゲームをしてる研磨くんも好き。指先も、目も、全部好き』
「…」
『研磨くんが気持ちよくなってるときの、表情も大好き』
「…ちょっと、穂波」
『もっともっと知りたい。わたし研磨くんがどんどん好き』
「…ん」
『…でも、別に急いでない。ゆっくりでいい
何でもない毎日を一緒に過ごせるのが、一番幸せ』
「…どうしたの」
『どうもしてないよ 笑』
「…」
『告白?宣戦布告?…ん、宣言かな?』
「…」
『…今日の朝、学校来るときに2年生に好きって言われた』
「…」
『わたしと研磨くんの関係は何一つ変わんないから、
わざわざいう必要があるのかわかんないけど、でも言わない理由もないから…』
「…ん。…引いてくれた?」
『…うん』
「…部活とか、わかる?」
『サッカー部だって言ってた』
「…ん」
普通に想ってもらえること
勇気を出して気持ちを伝えてもらえること
それ自体はすごくありがたいことだし、素直に受け止めたい。
語弊があるかもだけど
わたしにとって誰かの想いを断る理由に
“彼氏がいるから”はない
彼氏が居ても惹かれる時もあるだろうし、
彼氏が居なくても惹かれないときは惹かれない
今日の人は、研磨くんのこと知りもしないで
“あんなやつ”と言った。
そのときはグッと堪えた研磨くんへの想いが
今、研磨くんの前で溢れでてしまう
研磨くんはちょっと困った顔をしながら聞いてくれた
相手がいたって、好きになることもあると思う
でも好きな人の好きな人を、
簡単に侮辱しちゃあいけないと思う
そういう風に流れちゃう心をもったいないな…と思った
掃除のチャイムがなる。
「…穂波、今みたいの、またあったら教えて。
だからってどうこうするわけじゃないけど、知っておきたい、かな」
『…ん。また、あったらネ………研磨くんも、そういうのあったら教えて?』
知ってどうするわけでもないけど
確かに知っておきたいかも。ってきっと研磨くんと同じ気持ち
「…おれは、ないでしょ」
『なんてことを!研磨くんはとても魅力的な人だよ。
これから絶対どんどん魅力が溢れてきちゃうもん。…だから、ね?』
「……ん………掃除行こっか」
教室にお弁当を持って帰って
それぞれ掃除に向かう