第37章 powder
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夜、タヒチアンのレッスンを終えると
知らない番号から着信が数件。
ショートメールに1通同じ番号から
【俺俺!侑やで】
…侑くんかぁ
んーと、この場合どうすればいいんだ?
慣れないことに考えこんでると、着信。 侑くんから。
『もしもし』
「やったー やっと声聞けたぁ 嬉しい!めっちゃ嬉しい!」
『…ふふ』
快活で心をくすぐる声、というか 人というか。
「昨日ケーキ食ったで。あと今日、鉄火味噌?メシに乗っけて食べた」
『うん』
「旨かった〜 ありがとうな 手紙も嬉しかったで」
『こちらこそありがとう』
「なぁ、俺もLINEとかしたいんやけど、サムも角名も教えてくれんねや」
『あ』
そうだよね、侑くんだけ知らなかった
「穂波ちゃんから俺の聞いてくれん?」
『うん、今度聞いとくね』
それから駅に着いたら切るから話そうってことで
わたしが駅に向かう間、なんでもないけど妙に盛り上がる会話を楽しんだ
「あんま夜道一人で歩いたらあかんよ」
『…ん』
どうしても一人で歩くし、うまく返事ができない
「あれやったらいつでも電話して。夜やったら大体出れる」
『…?』
「電話で話しとったら、変なやつも襲いにくいんとちゃうかなって」
『…侑くん、優しいね。ありがとう』
「ええよ、俺も嬉しいし、ほんまにいつでも電話してな。
何曜日が夜歩くことになるん?」
『月、火、金。 期間限定で水曜日も』
「…マジか!全部電話したら、週4やん! ええよ、俺は全然かまへん!
むしろ、めっちゃ嬉しい!」
『…笑 ありがとう、侑くん。
今日人少ないな、とかそういう時、電話するね』
「おってもおらんでも電話してな。俺もする。 駅着いた? それっぽい音がする」
『うん、着いた。 また電話するね。 LINEも。 今日はありがとう』
「ぉん! 大好きやで、穂波ちゃん!」
『うん、わたしも! じゃあ、おやすみ』
屈託なくって、ほんとかわいらしい人だな。
それにほんと、優しい。
ハッピパウダーを撒いてるのはみんなだと思う。
そして治くんがあんな風に言ってくれたのは
治くんが受け取るのが上手だからだと思う。
…ハッピーターン、買って帰ろっと。