第6章 層
いつものルーティンなのか、
みんなが汗をかきながら、流れるようにメニューをこなしていく様子は
見ていて、とても面白くて、2時間も経ってた。
途中から参加しだした、コーチの方の合図で休憩に入り、
こんなに時間が過ぎていたことを知る。
携帯をみると、カズくんから連絡が何回か来てた。
最後のメールは【お店で待ってる】
しまった、連絡もせずに申し訳ないっ
差し入れを渡しに階段を駆け下りると、
ちょうど研磨くんが居た。
「…あ、穂波。まだ見てたんだね」
『うん、みんなの練習見てるの、すごく面白くって時間忘れちゃった。
研磨くん、お疲れさま』
「…ん。………スケボーは?」
『そうなの、すっかり忘れてしまってて。今から向かおうかなって。…これ、差し入れ。よければ、みなさんで』
「…ありがと。……中行かないの?」
『………研磨くんに会えればそれで良い…かな』
「…ん。…もう行く?」
『…ん。……その前にギュってしてもいい?』
「…え、いきなり聞かれても……(いつもそんな許可とってこないのに)」
『…………』
「…別に、いいけど」
その言葉を聞いて、研磨くんに抱きつく。
汗の匂い。汗の感触。
………しまった…至極さわやかな汗なのに、近付くと色気を感じちゃう…
離れられない…
「…穂波?……もう、良い?」
ちょっとだけのつもりがしばらく抱きついてしまってた。
『…あ、うん。補充できた』
「…ん。じゃあ、」
そう言って、いきなり唇を奪われる。
柔らかく吸い付くような優しいキス。
「行ってらっしゃい。ケガ、気をつけてね」
『……………』
「…穂波?」
『…うん、行ってくるネ。研磨くん練習頑張ってネ』
もうっほんとにずるいずるいずるい
ギュってしても抱き返してはくれなくて、
きっと意味はないのだけど
部活中だもんなぁとか考えちゃったりもしてて、
そしたらあんな風にキスしてくるんだもん。
トーンも表情も変えずに…