第36章 たぬき
ー研磨sideー
ぐりぐり…
え、なに。 痛いんだけど。
目を覚ますと何かに溝落ち辺りをぐりぐりされてる。
え? あ、ハルくん。 おれ一緒に寝ちゃったのか。
ていうか身体の向き。
頭はもう布団から落ちちゃってるじゃん。
足はおれの溝落ちを… いたいいたい
そーっと音を立てないように起き上がって、
そっとハルくんに布団を掛け直して。
落ち着いた大人たちの声のするリビングへ行く。
「お。研磨」
「研磨くん、ありがとう。ハル寝かしつけてくれて」
「え、寝かしつけ? いや勝手に寝ただけ…」
「はい、お水。 アキくん、出発前にお茶飲んでく?」
「うん、ありがとう」
萌さんからグラスを受け取り水をごくごくと飲む。
絵本読んでそのまま寝ちゃってたから喉乾いてた。
それからあったかいお茶と小粒の美味しいチョコレートいただいて、
ラッピングしてくれたピアスもちゃんと受け取って。
朔さん家をあとにする。
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「陽、かわいかったな」
「…おもしろかった。 小さいし」
「…笑 たしかにおもしろいよな」
「うん」
「服着てるとまぁ普通に小さいけど、
服脱いでお尻見ると、ちっさ!お尻ちっさ!ってならない?」
「…うん、なった」
「な。いや、いいわぁ、子ども。おれもそろそろ…って相手いねーしな」
…選び放題っぽいけど。そういうことじゃないよね。
それくらいおれにもわかる。
「まぁ、気楽にだわなー」
「…ん」
「子ども欲しくなった?」
「前から欲しいなとは漠然に思ってたけど」
「マジか」
「あ、いつか、欲しいなってね。 …でも、こんな風にリアルに想像できてなかった」
「なるほど。 あれはまぁリアルの何分の1だろうな?わかんねーけど。
少しでも垣間見える感じはするよな。 …で?大変そう?」
「大変だろうし 目まぐるしそうだけど おもしろそう。 …それに」
「それに?」
「お母さんになった穂波が見たい」
「親かよ!親戚かよ!笑」
「…でも」
「…?」
「まだしばらくおれも、独り占めしたいなとも思った、かな」
「………」
「………」
「当たり前だ、お前まだ17だっての」