第36章 たぬき
ー穂波sideー
1月18日(金)
水曜の夜、クロさんと英語の勉強をして、
部活帰りの研磨くんとうちまで帰った。
水曜から週末まで、お泊まりオッケーが出たらしい。
昨日はレッスンのない日だったので、
研磨くんに頼まれてマネ業務をした。
2人のマネ希望だった子も無事に入部届を出してくれていて、
わたしはその補佐というか。教えれることを教える役だった。
そして今日、金曜日。
自分の分と研磨くんの分に加えて、
恐れ多くも夜久さんのお弁当を作らせてもらった。
今週末はセンター試験で、
来週から3年生は自由登校だ。
登校日とかがたまにあるらしいけど、
もう学校に行けば会えるっていうのは今日が最後なのか、と少ししんみりする。
そんな高校最後ってわけじゃないけど、
ちょっとした区切りになる今日のお弁当を作るに至ったのは、夜久さんにお願いされたから。
夜久さんのお母さんは昨日の夜から不在で、今日お弁当はない予定だったらしくって。
何か買うようにと渡されたお金を弁当代!って渡されたけど、受け取らないことにして。
今度、たい焼きを奢ってもらうことにした。
『夜ー久さんッ』
四限のあと、3年5組の教室に。
「おー穂波ちゃん! あれ、研磨は?」
『3年生の教室行くのいやだって。下で食べるって』
「…あぁ、まぁそうだわな 笑 その余裕が羨ましいわ」
『…?』
「じゃ、俺の前の席座って!一緒に食お」
『うん!お邪魔しまーす』
「黒尾には来んなっつっといた」
『あはは 笑 ほんとにいない。優しい、クロさん』
同じクラスのはずのクロさんは本当にいない。
…なんだか、お弁当を初めて食べてもらうって緊張するな。
「うっわ!まじかー なにこれ研磨がなんか言った?」
前研磨くんに作った野沢菜巻きのおむすびに
夜久さんが反応してたって教えてくれたから、
野沢菜巻きにした。もう一つは肉巻き。
魚より肉派って聞いたから。
おむすび(野沢菜巻き、肉巻き)、鶏ささみの南蛮漬け、味玉、
切り干し大根の煮物、ブロッコリーの胡麻和え、にんじんしりしり、赤蕪の甘酢漬け。
あとあったかいお茶も持ってきた。
「んー!うまい!やばい!」