第36章 たぬき
ー研磨sideー
1月8日(火)
春高4日目。おれらは学校。
『…』
穂波が携帯をちらと見て、それからパタンと伏せて机に追いた。
「…笑」
そのまま携帯を鞄に放り込んで弁当の包みを開け始める
「ねぇ、穂波」
『ん?』
別に動転したりとかはしてないな
「携帯、大丈夫?」
『あ、うん。大丈夫。ちょっと見なかったことにした』
「うん、それはなんとなくわかった」
『…』
「だから気になるというか」
『そっか、そうだよね』
穂波はふと挑戦してみようと思って
春高の時に何人かと連絡先を交換したらしい。
そのみんなからのはじめての連絡が一気にこの昼休みの時間に来てたって。
「…笑 そっか、まぁ、穂波のペースでいいんじゃない」
『うん、ちょっとずつ』
白布ってやつ1人に返す時もすごい考えてたもんな。
おばあちゃんみたい。
穂波の行きたい大学のエッセーのトピックの一つに
自分の1番の才能やスキルは何かってのがあるらしくて。
なかなかまとまらないって言ってた。
具体的なスキルで行くか、内面的なとこでいくか。
一つに絞ってからどっちもうまいこと盛り込めばいいんだよね、とか言いながら。
まだ時間は十分あるから
8個全部書いてカリフォルニアにいるアキくんのアメリカ人の友達に読んでもらうって。
穂波の行きたい大学の院生で、分子生物学を専攻してる人。
その人もコミュカレってのには行かずにストレートで入ったらしい。
アキくんが報酬をその友達に払ってくれるから
いわば家庭教師というか、赤ペン先生みたいな感じかなって言ってた。
赤ペン先生…って思ったけど、特に何も言わないでおいた。
レッスンを始めた時もそうだった。
どんなに新しいことを始めても、穂波は変わらない。
変わらないけど、楽しそうで。
変わらないけど、新鮮で。
すきだな、って思う。
今日は部活は休み。
だけど穂波はレッスンに行くし、まぁ普通に家に帰る。
ゆっくりゲームする。
クロの英語をみるのは週に一回、水曜だって。
だから、水曜は部活から帰るともしかしたら、
クロん家に穂波がいるかもしれないってこと。
…なんか、良い