第35章 fun
ー穂波sideー
──「もっと知りたいな、チャンスを無駄にしてられんな、いう想いで使うんじゃないの」
倫ちゃんが言ってた。
言ってたから、ってわけじゃないけど…
よく知らないとはいえ、だれかれ構わずってわけじゃないし、
確かにもっと知りたいって思う人たちが
わたしのことを知りたいと思って連絡先を聞いてくるんだもんな。
そっかそうだよな。
結局自分のペースでしかやり取りはできないことはわかってるんだし。
いっちょ、やってみよう。
もう今日すでに、治くんと倫ちゃんとそれから旭さんとも交換したし。うん。
幸郎くんはまだLINEやってなくて、
わたしはインスタグラムやってなくって、
結局メールアドレスと電話番号を交換した。
そして後日LINEのアカウントを幸郎くんが作って送るって。
だからわたしにはインスタグラム始めてねって。
なんだか、幸郎くんの力みのない優しい声で言われると
落ち着くというか、若干催眠術みたいな心地。
すとん、と入ってきて、そう、諭されてしまう。
「じゃあ、穂波ちゃん、またね」
『うん、幸郎くんも光来くんも明日も頑張ってください』
「おー!じゃあ、またどっかでなー!」
2人の背中を見送って。
わたしも家に帰ろう。
…試合観てるだけでもすごい、1日なのに。
というか音駒対烏野の試合だけでもすごかったのに。
すごい試合を他にも観て、
すごい人たちもいっぱい見て、
それから魅力的なたくさんの人たちに会った。話した。
すごい、もんのすごいたくさんをもらった。
ああ、すごいなぁ、バレーボールっていう世界を、
研磨くんに教えてもらって。
明日ありがとう、って改めて伝えよう。
研磨くんだけじゃない、音駒バレー部のみんなに。
ヴッヴッヴッ…
駅まで歩いてると、着信あり。
発信元は、白布くん。