第34章 knit
明日は、対烏野、初の公式戦。
電話越しの研磨くんの声はいつも通り静かで、澄んでた。
淀みがなくって、でも僅かにだけど確かに感じる高揚感。
ゲームをしてる研磨くんの隣にいても、いつも対戦してるわけじゃない。
そして、わたしが隣にいるときに
その対戦相手が研磨くんをわくわくさせるボスである確率はもっと低い。
たまに、そういう強いボスと戦ってる時の研磨くんは、
いつも以上に静かで冷静で、そう、虎視眈々と攻略する方法を考えてる。
指を動かしながら脳をフル回転させてる。
攻略することにただただまっすぐ向かっていながら、
心のどこかでまだ終わりたくないって思ってることも手にとるようにわかる。
そして、負けたときはがっかりしながらどこか嬉しそうで。
勝ったときはほっとしながら、どこか悲しそうにする。
きっと、翔陽くんに対する研磨くんの視点は、そんな感じかなって。
そう思ってる。
入れないし入りたいとも思わない、
大事な大事な研磨くんの領域みたいなもの。
側からそーっと覗かせてもらえるだけで、すごくわくわくするのだ。
…それから、それから。
ツトムくんは今までの2試合とも音駒戦の写真を撮ってる。
もちろん、明日も。
ツトムくんが切り取ってくれる試合中のみんなの姿をみれるのが、
今から楽しみすぎる。
みんながそれぞれいい試合を、できますように。