第33章 求肥
ー穂波sideー
侑くんとわかれて、
観客席に行くと音駒が試合するコートの隣で
烏野高校と対戦相手が試合前の練習してるとこだった。
ん?翔陽くん…、裸足?
少しそっち寄りの席にしようかなぁと通路を歩いてると、
「穂波ちゃんやん」
にこぉって笑いかけながら話しかけてくるのは…
銀髪のツーブロックの人。
会ったことないけど。侑くんそっくりだ。
「俺、わかる?」
『わからない。侑くんには会ったけど、双子さん?』
「お、見分けつくんや。違うよなぁ俺ら、全然ちゃうよなぁ?」
『うん、全然違う』
「…えぇなぁ。 俺、おさむ。 よろしくな」
『おさむくん。 穂波です。 よろしくね』
「知ってんで、さっきな、見かけてん。
穂波ちゃーん!言うて呼ばれてんの」
『あぁ!雪絵さん!そっかそっか』
…ほぅ。だから名前知ってたのかぁ。
侑くんよりトーンが落ち着いてる。
どぎまぎとかしなそう。
『おさむくんってどんな字書くの? さんずいのおさむ?』
「お。正解。 何でわかったん?」
『侑くん、人を助ける的な意味の漢字だったなぁと思って。
治くんも同じ意味込められてるんだとしたら、的な』
「へぇ、賢いんやな、漢字の意味なんて知ってんねや」
『いや、賢くはないけど、漢和辞典で遊ぶのが好きなの』
「…漢和辞典で遊ぶって何?」
『…笑』
デジャヴ…
『ぱらぱら〜ってして、へぇ…って』
「………」
『………』
「紙なんや、電子辞書ちゃうねんな」
おお!ツッコミのテンションも内容も全然違う!
「…なに?そんな興奮した顔して」
『ううん、何でもないよ。
そう、電子辞書も好きなんだけど、あれは収拾つかなくなるの』
「止まらんくなるん?」
『そう。もうエンドレス。便利すぎて。 だからせめて漢和辞典は紙。辞書の紙すきだし』
「あーあれな。 あれは、ええよな。 音とか」
『うん。指ざわりとか、薄さとか。 …あと』
「におい」
『におい』
「…な、そうやんな」
『うん、そうだよね』
…治くん、話してて落ち着くなぁ