第32章 あわ
ー研磨sideー
「研磨くん!夏も来ようね」
穂波は会計の時レジをしてくれた若い男に
夏はかき氷とかやってますか? って聞いてた。
もちろんやってますよ、また来てください。
着物可愛いですね。とてもお似合いです。
って言われてた。
…知ってる。穂波の和装はかわいい。
着慣れてる感じがまた、ギャップがあってたまらないんだ。
「…ん。かき氷すきなの? 祭りで食べないよね」
『お店で食べるのがすきなの』
「…ふーん」
『あ!いつものお店もあったかくなったらグラニタするって言ってたね』
「…あぁ」
『きゃー』
盛り上がってる。手には袋をいっぱい下げて。
クロん家とおれん家と自分ん家と千葉のおじいさん家にだって。
おてんば娘。
羽根つきとかさせたい…
「…研磨送ってくんだろ?」
「あぁ、うん」
「俺、先帰るわ。 また明日な」
「…え」
「え、って何よ。 え って」
「…一緒に行こうよ」
「はい!? なんなの今日お前。
そこは、 あ、うん。じゃあね じゃねーの」
別に何だっていいじゃん。
こうやって3人で歩くのいいな、って思っただけだし。
『…ふふ わたしもクロさんいてくれたら嬉しいなぁ あっでも、受験勉強?』
「んーにゃ、それはもう春高後に詰め込むのみ。あー周平にカテキョしてもらいてー」
「…あれ周平っていま」
『カナダ〜 月末にアメリカでおっきな世界大会』
「やべーな、周平ってもしかして冬季五輪とか出ちゃう感じ?」
『候補には上がってるみたい。でもスノボ、日本にも選手いっぱいいるもんね』
「…ネットニュースで取り上げられてた」
「へぇ、何て?」
「スノボも学力も国内トップクラス、マルチリンガルでイケメンな超ハイスペック男子…」
『ぶっ 笑』
「…笑 まぁ事実だわな」
『いやいやいやいや… ちょっと待って… 全然結びつかない…笑』
穂波は笑いこけてるけど…
見出しのセンスはどうかと思うけど、別に何一つ誇張はないんだよな。
イケメンっていうのはきっと、人それぞれなんだろうけど。
大して勉強してなくても全国トップの高校で学年一位で。
大学のいろんな研究所からも誘いが来てるらしいし。
周平は大学行く気ないみたいだけどさ。