第29章 山茶花
ー穂波sideー
放送部…?なんだろ。
「本日は音駒高校文化祭にご来場いただきまして誠にありがとうございます。
ご来場中のお客様に、迷子のお知らせを致します。
16歳の女性を探しております。
服装は音駒高校の制服にアイボリーのカーディガン。髪の毛は茶色のロングヘア。
お名前は運天穂波さん。運天穂波さんです。
お連れの方が探しておられます。心当たりの方は、放送部または実行委員までご連絡ください。
また、近くに居る様でしたら、ステージ袖までご一緒にお越しくださいませ。
繰り返します………」
…なにこれ、恥ずかしい。
隣をみると研磨くんはお腹を抱え
肩を小さく震わせてる。
「くっ……笑」
『………』
「…くくっ 笑」
『…研磨くん』
「…ん 笑」
『…わたし行ってくるね、ずっと呼ばれちゃいそうだし』
「うん… おれここにいるから」
『…ん』
とりあえず行くしかない。
「……また、近くに居る様でしたら、ステージ袖までご一緒にお越しくださいませ」
♪ピーンポーンパーンポーン♪
放送が終わった。
階段の方へ向かって歩き出すと、照明の人に呼び止められる。
…研磨くんも、呼ばれてる。
「…多分、一緒にこいって意味だと思うよ」
「…え」
「まぁ一人でいっても良いけど
その場合、彼の方も呼び出される可能性がゼロではないんじゃないかなと思って」
「…やだ」
『………』
「穂波行くよ。遅くなるとまた呼び出しかかりかねない」
差し伸べられた研磨くんの手を取り歩き出す。
ステージ袖まで向かうのに、壁側のスペースを歩くんだけど…
くすくす笑い声とか、きゃーとかなんとか…
恥ずかしいったらない。
『ごめん、研磨くん』
「え? あぁ、いいよ別に。穂波といる時は気にならないから」
『………』
向かってる間に焼きマシュマロくんたちがステージに戻ってきた。
「アンコールありがとうございまーす!
とりあえず、一曲やります。聞いてくださーい」
みんなの意識がステージに向かってる間に
そそくさとステージ裏に入った。