第29章 山茶花
ー研磨sideー
【やったな!春高でやろうな!負けたら即ゲームオーバーの試合!
ぜってー負けねーからな!ぅおおおーやべー!すげー楽しみだ!
さっき研磨からのメール見てぅおおおーってなって走ってくる!っつって
玄関開けたらでっけー猪がいたんだよ!すっげーびびった!
おれの方見ててさ、身体も正面向いてて突進されるかと思った!
研磨、猪見たことあるか?おれはあんな風に近くで見たのは初めてだった!
あいつら夜行性だからさ、………】
昨日の翔陽からのメール。
【春高行くよ】って送っただけなのに、
倍どころじゃない文字数のメールが返ってきた。
…いつものことだけど。
春高、どうせやるなら強いボスとやりたい。
…こっからもうちょっと、レベル上げ、してく。
今日は父さんと母さんは昼から出かけるらしくて、
家でゲームしたいし、でも穂波にも会いたいし来てもらうことにした。
10時ごろに約束した。 …そろそろ来るかな。
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下から話し声が聞こえてしばらくすると
部屋の扉がノックされて、穂波が入ってきた。
『研磨くん、お邪魔します』
「…ん、飲み物とってくる」
『あ、お母さん持ってきてくれるって』
黒いコーデュロイのロングスカートにグレーのフード付きパーカー。
ノースフェイスのフリースブルゾン。黒とダークグレーの切り返しのやつ。
かわいい。かわいいけど、首元が見えない。
ちぇっ…
穂波は上着を脱いで
ゲームしてるおれの隣にちょこんって座る。
「そのフリース、おれもいいなって思ってた。カーキかそれか」
『わ、本当?じゃあ、兼用にしたらいいね』
「………」
いや、うん。良いんだけど…
良いんだけど、おれら一緒に住んでないし、
卒業後も穂波アメリカ行っちゃうし。
…いつの話。