第29章 山茶花
『…カズくん、今日は夕飯どっかで食べてく?』
「…やだ。店の人に弟扱いされる」
…かわいいなぁ。
カズくんを知ってるたくさんの人たち…
研磨くんでさえ、どんどん身体も心も成長していくカズくんを
良い意味で末恐ろしいって思ってる。
…のに、カズくんは自分がみんなより若いってことにハンデを感じてるなんて。
手元にスケボーがないから余計かな。
おれはこれで勝負できるってものを今は持っていないから、心許ないのかな。
「研磨にはそんな風に思わないのはなんでかな」
『そんな風?』
「あー、やだな。って、思わない」
『さぁ?何でだろうね。 カズくんが研磨くんを好きだからかな』
「…は? 別に研磨のこと好きじゃないし。ただ…」
『…』
「ただ、一緒にいてラクなだけ。尊敬するし」
『うん』
それから2人で研磨くんの魅力を言いながら目的のショップがある駅まで行った。
カズくんはわたしのことを好きだと言ってくれるけど、
同時に研磨くんのことが好きな同志でもある。
翔陽くんもそうだけど、翔陽くんとはこんな風に喋ることがまだないし…
わたしからの魅力は、言葉にしてしまうと単純で。
優しいとか。いちいちかっこいいとか。色っぽいとか。
たまにかわいい。とか…
カズくんがあげてく魅力は
「ほんとに頭いいし冷静。じゃないと…」
って、ゲームのことや試合で見た様子、スケボーに乗った時の事を解説付きで教えてくれたり。
「うるさくない」
っていう根本的なところだったり。
「でも何で山本くんみたいな人とも一緒にいれるんだろう」
っていう素朴な疑問が浮かんできたり。
『きっとそれは、お互いに認め合えたからなのかなぁ…わからないけど』
「…」
『お互いに認め合って、干渉しすぎない関係になれるとさ、
似たもの同士の時とは違った化学反応というか… 生まれたりするのかも』
山本くんもそうだけど、翔陽くんなんてもっとそうだ。
「…ふーん。おれにはまだよくわかんない」
『そう?わたし、カズくんと遊児の空気感好きだったけど』
「…え。 遊児はうるさい。 良い化学変化なんて何も起きないし」
心底心外だ、という風に吐き捨てるその全てが研磨くんそっくりで笑ってしまった。