第29章 山茶花
ー古森sideー
「手、洗いに行かなくていいんだ?」
知らない人の腰を抱いたのに、手を洗いに行かないなんて。
…聖臣じゃないみたい。
「穂波ちゃんって言ってたね、かわいい子だね」
「………」
「あ、早速調べてるの?梅肉エキス…」
「………」
「強力な抗菌作用、整腸作用…
血液をサラサラにして免疫力を高める、だって」
「………」
「なんで聖臣にそんなこと言おうと思ったんだろうね。ドンピシャすぎ」
「………」
「いい加減何か喋ってってば」
「受け身取ろうとしてた。転びそうになったとき」
「へぇ、一緒にスケボーしてるのかな。あの2人は姉弟?」
「…俺を見る目が」
「うん?」
「お前と一緒だった」
「俺と?」
「…まぁ、いい。行くぞ」
俺と一緒ってどう言う意味だろ。
「また会えたらいいね。…音駒って文化祭有名じゃなかったっけ?」
「………」
「いつかな、調べとこっか」
これで人混み大っ嫌いな聖臣が行くって言ったら…
ちょっとおもしろいかもって思うけど。
まぁ、行かないよな。