第26章 手のひら
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烏野のみんなを見送る。
翔陽くんは研磨くんに、
「やろうな!…なんだっけ、えーっと……負けたら即ゲームオーバーの試合!」
って言って、バスに乗り込んだ。
研磨くん、あの話翔陽くんにしたんだな。
また、あの顔してたのかなぁ…
あの、すごく猫っぽい捕食者っぽい、表情。
…あの表情、最近たまに見るようになった。 ゾクゾクする、顔。
蛍くんは、月末に宮城で、と言ってハグをしてまたねをした。
耳元で何か囁くのは、もう予測して構えていたんだけど、
それでもあの声で囁かれるとドキッとしてしまった。
待ってます、それだけの一言なのに。
研磨くんや蛍くんのようなひとは、一言の威力がすごい。
夕くんや力くん、みんなみんな。
代表決定戦、頑張ってね!
また会おうね!って気持ちいっぱいでハグや握手をして見送った。
それからいつものように、でも今年は最後。
調理室の片付けをしてると、京治くんがやっぱり来てくれて、
いろんな話をしながら、一緒に片付けを手伝ってくれた。
『いつも手伝ってくれてありがとう』
掃除も片付けも終えて、集合場所に向かいながら改めて伝えた。
「いやいや、とんでもない。俺も来たくて来ていて、受け入れてくれてありがとう」
『受け入れる…』
「あ、いや邪険にすることなく、手伝わせてくれて…」
『ふふ、そんなの当たり前でしょ。京治くんて、おもしろい』
「次は、代表決定戦で。来月末まで会えないのは少し寂しいけれど…」
『きっとあっという間だね。バレーボールの公式戦自体初めてみるから…
楽しみにしています。怪我、体調には気をつけてね』
…………
そんな感じで最後は京治くんだなぁというような、
ちゃんとした挨拶?に自ずとなって、そうして各校解散の時間。
さっきクロさんと大地さんとか、いろいろ。
各校の部員たちで、またな!って言ってて、それはなんだかとっても眩しい光景だった。
特に都道府県の違う高校となると、一層。
研磨くんの部活に対するモチベーションもどこか変化があるようだし…
身の引き締まる感覚。
わたしも自分のできることをちゃんとしよう。