第5章 夏
ー穂波sideー
出掛け間際の対面になってしまって、
すこし早足だったかな。と思うけど、
無事に紹介できてよかった。
『研磨くん、大丈夫だった?』
「…ぇ、うん。平気。すごく穏やかなお父さんだね」
『…ふふ。どしーんって感じはあるね。
2人とも言ってることそのまま思ってるから、ほんと、研磨くんはそのままでいいからね。
呼び方とかも、研磨くんの好きなようにでいいと思う』
「…うん。…名前で呼ぶと思う」
『…ん。あ、研磨くん何食べたい?』
「…え、あ、何でも食べたい」
『ふふっ 何かない?ざっくりとでも』
「………パスタとか」
『パスタ?…そっかいつもご飯だったね…パスタかぁ。…何色?』
「色?……んー、赤か透明」
『…ふふ。トマトかオイル?…じゃあ家にあるもので作れるかな。このまま帰ろっか』
「…ん。」
・
・
・
『…ラクにしててね。シャワー浴びてくる?』
「…ん、今はいい」
『…じゃ、あとで、よければ入っていってね。あ、お庭行くけど研磨くんも行く?』
「…ん。行く」
テラスのところの窓を開けて外に出る。
『これ、履いてね』
「…ん」
『ねぇ、研磨くん。わたしさ、ちょっと水やりするからそこにあるバジルの葉っぱ摘んでくれない?』
小さな竹ザルを手渡す。
「…バジル。…これ?」
『ん!ありがとう。10枚くらいお願いします』
別に自分でもできるけど、
葉っぱ触ってる研磨くんが見たかっただけ。
水やりをしながら
竹ザルを手に、しゃがんでバジルの葉っぱを選んでる研磨くんを
ちらちらと覗き見した。
…かわいい。。。
反対側の水やりも済ませてテラスに戻ると、
研磨くんはテラスにある椅子にすわって上を向いてた。
「…あ、穂波。なんか日が短くなったね」
『ほんとだね。もう8月も終わるもんなァ』
「ねぇ、穂波、こっち来て」
研磨くんは脚を広げて言った。
こういうとこ。不意打ちみたいな。ズルい。
『…ん』
拒否する理由もなく、研磨くんの脚の間に入るとぎゅっと腰を抱いて
わたしの身体に顔を沈める。
「…なんか穂波、湿ってる。水遊びしてきたの?」
『…つい、わしゃわしゃーって水やりしたくなっちゃう…』
「…ふぅん」