第26章 手のひら

ー月島sideー




自分でも本気で言ってるのか
からかってるのかわからなくなってくる

いや、言ってることは全部嘘じゃない
けど、それを穂波さんにいう必要があるのか、とか
そういうことを考えると、ちょっと反応を見たいっていう、
からかいの要素も大いにあるような。





「…まぁ、明日もあるし。スノボもいくし…今じゃなくていいけど」

『………』

「…いやでもやっぱ、見たいな」

『…え？　わっ…』





腰を掴んで下にむかってぐっと力を入れて
僕に跨って座らせた。

ぐっと腰を抑えたまま、穂波さんの顔を眺める

僕の肩に手を置いて力を込めてここから動こうとする穂波さん。
でも僕が押さえてるから、擦れるだけ。　…刺激になるだけだ






「…ちょっと、暴れないでくれる？」

『…だって』

「僕は座ったまま顔近づけて見てたかっただけ。
あわよくば触れる箇所が多ければ嬉しいと思ってここに座らせた」

『………』





…やっと動かなくなった。





「従順ですよね」

『…従順？』

「天真爛漫で、奔放なくせに従順。人の言うこと信じる」

『…へ？』

「質問して良い？」

『…あ、質問。あといくつあったっけ』

「多分僕は２つだけど。もういくつでもいいよ、ずっと続けたい」

『あ、うん。それはわたしも』






一度落ち着いてしまうとこの人は、
僕に跨って座ったままでも普通に会話をし始める。






「………」

『…質問、どうぞ』

「今、どんな気持ち？」

『今？　んーと、落ち着いてしまっている』

「………」

『蛍くんはさ、どきどきさせるの上手でしょ』

「………」

『でも、蛍くんはわたしを嗜めるのも上手でしょ』

「…はぁ、まぁ、チョロいんで」

『なんかそれが、安心するんだよなぁ…』

「………」

『完全にさ、転がされちゃってるよね、わたし』

「…それは本望ですけど」






結局、転がされてるのは僕なんだよ。

こんなことしたくなって。
僕のものにはできないにしても、少しでも先に進みたいと思って。

この人は何一つ計算なんてしてないだろうけど
それでも転がされてる。

けどそれが、一つも苦しくなくてむしろ落ち着く。
だからやっぱりどこまでもハマってしまう。