第26章 手のひら
10月6日(土)
合宿1日目。
日ごとに日は短くなって、
朝晩はずいぶん涼しい季節になった。
日の長さには関係なく、
学校が始まる時間だとかそういうのは一緒なわけで…
夏の合宿のときと同じ時間の電車に乗って高校にきたけど、
明るさが全然違うなぁとしみじみする。
そんなことは、サーフィンだとか日々の中で感じてはいるけど、
こうして日が開くからしみじみと染み入るような感じがするというか。
早めにくる顔ぶれ、遅めにくる顔ぶれ…
そういうのも大体決まっていて、するとやることも決まって来て…
音駒での合宿はわたしが参加するのはまだ3回目だけど、
それでもこの少しずつ重ねていく感じはやっぱりじわじわくる。
「穂波さん、どうして体育祭の応援団やらなかったんすか?」
『へ?』
山本くんのおじいさんが今回もお野菜を届けてくれるとのことなのだけど、
そのトラックがくるまで体育館でコートの準備を手伝ってる。
犬岡くんにふいに体育祭のことを聞かれた。
もう2週間前のことで、この合宿やお兄ちゃんの大会や、日々のこと…
それから10日後に控えた研磨くんのお誕生日のことで頭はいっぱいで
体育祭はただ、通り過ぎたような感じだった。
楽しいは楽しいのだけど…
「クラスのみんなも結構言ってました。穂波さんが衣装着てる見たかったって」
『…へぇ そっかぁ 考えたことなかった。応援団かぁ…
でも、研磨くんが袴着てるのは確かにカッコよかったなぁ。クロさんも似合ってたよね』
「そーっすね!研磨さんが引き受けたことには驚きましたけど」
『…ふふ。あれは、もう仕方なかった。あみだくじで決めたんだよ』
…研磨くんがあたったときの研磨くんの空気はもちろん、
クラス全体の空気もすごかった。 …今でも鮮明に思い出せる。
「音駒って文化祭、有名じゃないっすか」
『あ、そうなの?ごめんね、よく知らなくって。でも去年、お店、どのクラスもすごかったよ』
「店もだし2日目のステージが特にすごいって。
選考委員の審査通った人たちしか出れないって聞きました」
『あ、それは聞いた!去年は途中で抜けて帰ったからなぁ…』
「穂波さん出ないんですか?」