第25章 秋刀魚
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すっかりぬるくなったお湯に
追い焚きもせずゆるゆると2人で浸かった。
今は布団の中。
研磨くんは布団に入って少しごろごろして
あるタイミングてスイッチが切れたように、すとんと眠りに落ちた。
わたしはキャンドルに一つだけ火を灯して研磨くんの寝顔を眺めてる。
一度、中米のどこかの出身の英語を喋らない男性とサルサを踊ったことがある。
なにも言葉が通じないのに、そして、サルサなんて踊ったことないのに、
真似して踊っているうちに、手を取られ、気がついたらくるくると回っていて、
そして気がついたら腕で背中を支えられていた。
すごく興奮したし、なんというか、感動がすごかった。
言葉の壁をダンスで容易に超えたことにもだし、
男性にエスコートされる感覚にも舞い上がる心地がした。
今日の浴衣のそれは、そんな感じだった。
なんていうか、主導権は完全に握られていて。
でも、オラオラじゃない。
わたしのことを第一に考えてくれた上で、
主導権を行使してるっていうか。
そういう風に転がされるのはなかなかにときめく。
リードしてくれる。エスコートしてくれる。
…はぁ、かっこよかった。
やっぱり研磨くんの状況判断の速さや的確さはすごいな、と思う。
本当に頭がいい。あぁ、どこをどうとってもかっこいい。
3連休が終わった。
明日は研磨くん朝練あるし、わたしたちの日常が始まる。
週末は体育祭。
それから10月に入って一週目、
週末を含んだ三連休には春高前の最後の合宿。
音駒で、いつもの5校で。
10月には研磨くんの誕生日もある。
遊児や烏野高校の出場する代表決定戦も。
…季節がどんどんと巡っていく。