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【ONE PIECE】人はそれを中毒という

第8章 私という存在


近頃島の周辺が騒がしかった。
夜中に霧の中を静かに進む軍艦を何隻も見たし、その数日後には隣の島で火の手が上がっているのが遠目でもわかった。

クザンが帰ってくるとは聞いてないから別の部隊か。
あれだけの数ならばそこそこ上の地位にいる人物が動いているのだろう。
そんな大捕物がこんな所であったのか。

雪が降り積もる中を歩く。
隣の島は大荒れのようだがこちらはいつも通りの街の様子だ。

「おばさん、おはよう」
「おはようクロエちゃん。今日もよろしくね」

薬屋で仕事をもらうようになってだいぶ経つ。
カウンターの仕事から始まり、今では簡単な調合なら任せてもらえるようになった。
組合せ次第で違う効果の出る調剤は面白かった。

「今日は海軍が薬取りに来るみたいだから、メモの分用意しておいてくれるかい?」
「わかりました。昼頃でしたっけ?」
「そうだよ」

デスクに置かれた注文用紙を見ながら必要な薬草を揃えていく。
ゴリコリとすり潰して丸めていく。
丸薬になったそれを小分けして袋に詰めて、必要事項の書かれたラベルを張れば完成だ。
出来上がったのはお昼になるすこし前。間に合ってよかった。

「おばさん、ここに置いておきますね」
「はいよー」

紙袋に注文分をいれてカウンターにいるおばさんに伝える。
これで一旦仕事終わり。お昼休憩のため家に戻ることにした。

「ご飯食べてくるね」
「いってらっしゃい」

上着を着て店を出る。
先程よりも強くなってきた雪に家路を急ぐ。もう爪先がかじかんできた。

(ん…?なんだあれ)

道の隅っこ、雪が降っていなければ花壇があるそこが不自然に盛り上がっている。
雪とは異なる白い塊に近づいてみれば人間らしきものがマントにくるまっていた。

「…生きてる?」

トントンと強めに叩いてみたのはそれが全く動かなかったから。死んでるのか気絶してるのか。
ゆさゆさと揺らしてみたらマントの塊からポトリと帽子が落ちて頭が出てくる。
その小ささに自分と同じくらいの子どもだと気付いた。

「ちょっと、きみ大丈夫!?」

強く揺すり反応を確かめると少し呻いた男の子。
生きてはいるようだが全身氷のように冷たく、それとは関係ない皮膚の白さに目を見開いた。

(なんだったっけ…皮膚が白くなって死んじゃう中毒の…)

度忘れした名称よりもこの子の容態だ。


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