第6章 休暇(後半)
ベポとペンギンを伴ってバーガーを巡りをした夜。
彼らは仲間内で宴をやるとの事でローもコテージには居なかった。
一人でいるのも時間が勿体なく思えたクロエは、軽く変装をして下町へと向かった。
コテージの辺りとは全く違う、ガヤガヤと酔っぱらいや客引きの女がうごめく通り。
そこそこ大きめの酒場に入り、店の中央に丸く設置されたバーカウンターに腰を下ろした。
バーテンが円卓を回りながら酒を作り、ウェイターもテーブル席に酒を提供すべく忙しく出入りしている。
「何にする?」
「バーボン、ロックで。すこしツマミももらえる?」
「島の特産の海老を使ったやつでいいか?」
「ええ。まかせる」
バーボンのグラスとチェイサーが置かれ、ちびちび飲んでいるとひとつ席を空けた隣に男が座る。
酒をひとつ頼み、くるりと此方を振り返ってにかりと笑った。
「一人?良かったら話し相手になってよ」
裏表の無さそうな爽やかな笑みで人懐っこく寄ってくる男に、いいよと返す。
「やった。本当に一人だったんだ。美人だから連れでも待ってるのかなって思ったんだけど、勇気だして声掛けてみて良かった!」
「一人酒好きだからよく飲んでるよ。こうやって新しい人との出会いもあるしね」
その気は微塵もないが暇潰しにはなるかと思い、会話に花咲かせらように言えば男は気を良くしたようであれこれと喋りだした。
酒を口に含みながら適当に相づちを打っていると、前方の席が賑やかになる。
店の奥に位置するそこを見ると海賊の一団で、なんとロー達だった。
先日挨拶した面々が楽しそうにグラスを合わせる様子を眺めていたら、目の前に美味しそうに調理された海老が置かれた。
「あの海賊達が気になるなら、離れた2階席用意しようか?」
クロエの視線を勘違いしたのかそう提案してきた男に断り、お酒の追加を頼んだ。
「あれはハートのやつらだね」
「知ってるの?」
「噂程度さ。最近勢いのあるルーキーで、島に上陸したと知ったらここの酒場の女達も店に来てくれないかと色めき立ってたよ。何処がいいんだかあんなひょろい男…」
私はその貶してる男の女ですけどねと心の中で告げ、白けた視線を送るが男はそれに気づかずに自身の筋肉について語りだした。
クロエは今日の話し相手選びは失敗したなとため息をつくしかできなかった。