第23章 ハートの新人、初陣
「え~六式を習得したいと言っていたお弟子さん、集まれ~」
海賊船が目視できる位置まで進み、浮上する。
甲板に出れば相手もこちらを認識したのだろう、敵船の甲板がザワザワと騒がしい。
ローは鬼哭を担ぎ、誰が出したのかパラソルの影に置かれたチェアに腰かけた。
そんな中、クロエは甲板に出ていたクルーの中から、六式を教えてほしいと言っていた皆を集める。
「私は基本的に見て盗めスタンスよ。なので、少しゆっくりめに動くから学びたかったらよーく見てて」
相手の船の喧騒が聞こえる。
得物がかち合う音もしていて、ドボン、と近くに落ちたのは大砲の玉か。
「足技が多いから、それ注目ね!望遠鏡沢山ある?細かいのは遠いから見えにくいかな?船近付ける?」
大砲がこちらに向かって再度放たれる。
これは船に当たりそうだとわかったクルーが慌てる。
立ち上がりかけたローだが、クロエが「任せて」と笑ったのを見て鬼哭を下ろした。
大きく跳躍したクロエは砲弾の前に飛ぶ。
火を吹き迫るそれを覇気をまとった足で敵船へと蹴り飛ばした。
「やる~」
すたん、と降り立ち柵に乗ったクロエはローを振り返り、「いってきます、キャプテン」と言い、柵から飛び降りた。
「「「クロエ!?」」」
クルーが駆け寄り船の下を覗こうとすれば、その前にバフッと連続して音が響き、クロエが空を駆けていくのが見えた。
「す、ずげー…」
「あれは"剃"ってやつとは違うんですかね?」
「"月歩"、だったか…原理は分からねぇが空を駆けていけるみたいだな」
「チートじゃんか、あんなのー!」
人間の限界を超越した技に唖然とするクルー。
億を越え、七武海となった自分でも習得は容易なものではないだろう。
これを見て盗めとは酷なことを言う。