第21章 番外編 初めてのキス
どうしてこうなったんだと考え出してもよく分からない。なんでかこんな状況になった。そりゃ私は経験したことはある。前世で、だけど。今世では初めてだ。
あぁそうだ、ファーストキスだ。
「いいか」
いや、よくないって言っても退かないんだろうことは短くない付き合いでわかる。そんな顔してる。
無理矢理はしないけど絶対に頷くまで引かないやつ。
「なんで、私?」
やってみたいけど近くに勘違いしなさそうな良さげな相手が私しかいなかったから取り敢えずこいつでいいか、的な?
一応聞いてみよう。
「クロエとしたくなった」
おっとまさかのご指名での話だった。聞いたことでさらに逃げられそうにもなくなった。いや私は嫌ではないからしてもいいのだけれども。
それでも私はその先の気持ちを確かめたくなってしまうのは歳食ってて(精神的に)チャラく遊びのように取り敢えず~な流れが許せないからか。
キスひとつでなに言ってんだ自分。気色悪い。
相変わらず私の左右を長い両腕で塞ぎ、ぐっと近づけたお顔はここ最近少年っぽさが抜けて男になってきた端正な顔。あぁなんて麗しい。
黙っていれば本当に良い。
煮えきらない返事ばかりの私に焦れたのか足の間に膝を入れて動きを封じてきた。やろうと思えば逃げられるが、なんだか精神的に体を動かすことができなくなってしまった。
ただキスしてみたいって言われただけなのに、なんだこの囲い方は。
「たかがキスだ。目ぇ瞑れ」
「女の子にそんなこと言っちゃイカン!」
ファーストキスをなんだと思ってる!世の女子は憧れや夢を持っているんだぞ。それを"たかがキス"とは。顔面殴られるぞ。
多分ね。憧れなんてないから、想像でね。
それとも相手は私だから許されるということか?若いピュアな女の子ではなく、精神的にはババアも良いところの女なんだから、どうでもいいだろってことか?
…いかん、卑屈になってきてしまった。
取り敢えず私とキスがしたいと言うローを見上げ、「わかった…いいよ」と言ってぎゅっと目を瞑った。
さぁいつでもかかってこい!…じゃないか。とりあえず、どうぞ…
「……」
するまで長いな!
上向いて目を瞑って待ってる私の身にもなれ!恥ずかしいだろ。
そう文句を言ってやろうと目を開いた瞬間、唇にむにっと思いの外柔らかいローの唇が触れた。