第18章 番外編 きみとの距離
「おい、こんなところで寝るな」
肩を揺すって起こしてみるもののいつもの通り起きない。
日課の鍛練から帰ってみればベポと入れ違いになり、起こしても起きないからソファに寝かせてると聞く。
見てみれば猫のように丸まってソファで寝るクロエがいたのだ。
寝付きよくどこでも寝るクロエを起こしてベッドに促すのは容易ではない。
強めに揺さぶってみても呻くだけ。
「風邪引くぞ」
冷えてきた初秋。
まだ薄手の服を着るクロエは寒そうに肩を震わせる。
(ったく…人には防寒とかうるせぇくせに、自分は無頓着か)
自分の部屋からブランケットもってきて全身を覆ってやる。
もこもことしているブランケットが暖かかったのかすり寄るようにして顔を埋めるクロエ。
その仕草がやっぱり猫みたいで気付いたら頭を撫でていた。
(なにやってんだ俺は…)
近頃クロエとの距離をはりかねている。
ぐいぐいとくるクロエはスキンシップが激しく、ボディタッチはもとより抱きつくなんて日常だった。
だけどベポはまだしもシャチやペンギンにも触れているのを見た時は心臓を掴まれたかと思うほど息苦しくなったし、ミンクの挨拶をする時は思いきり眉間にシワがよっていることだろう。
以前は気にならなかったのにどうしたというのだろうか。
それからクロエが触れてこようとするのがわかると身をかわすようになってしまった。
しかし他のやつに触れてるのを見ればもやもやする。
寂しそうにしているのは分かっていた。
だがどう扱って良いのかわからないこの感情。
その対処が、触れようとするクロエを避ける行動だった。
想いに気付くまであと数ヵ月。
end.