第13章 ハートの海賊団
「準備できたか」
「うん。あの買い出しのための…」
「いくぞ」
「え?キャプテンも?」
「あぁ。選んでやるよ、お前の下着」
「……」
「それにこれ、色気ねェから早いとこやめろ」
「………」
リビングに着いて早々、一緒に買い出しに行ってくれると言うローに喜んだのもつかの間、投下された発言に加えツナギの襟元をずり下げて覗き込んできた。それに思わずイッカクに借してもらった帽子を顔面に押し付けて目の前の体を遠ざけたのはしょうがないことだと思う。
ぶつかった鼻先がすこし赤いがそれでもイケメンなその顔が、なにしやがんだてめぇ、と睨んでくるがこっちの台詞だ。皆もいるリビングでなに人の胸元覗き込んでんだ。見てみろ、目撃してしまった数人が固まってる。
ローがなにを覗き込んでやめろと言っているかと言うと、私の胸元にあるサラシだ。だって、身一つで助け出されてきたから持ち物はなく、衣服は借りれたが下着は残念ながら借りることはできなかった。下はいい。未使用のストックを数枚譲り受けたから。だが上は…まぁサイズが違ったとだけ言っておこう。
だから揺れて邪魔な胸にサラシを巻いて生活していたのだ。
それをお気に召さないローはせめて部屋にいるときだけでも取れとうるさいことこの上無い。
「ついて来られると面倒そうなので、お金だけ下さい」
「あァ?ふざけんな」
「じゃぁ店の前で待ってなさい」
「俺に命令するな」
「プライバシーを守れ」
「もう全部見て知ってんだ。今さらだろ」
「うわっ、セクハラですよキャプテン。セクハラ反対」
「うるせぇ。ルーム…」
「キャプテンってさ、あんなんだったっけ?」
静かになったリビングで仲間の一人が呆然と呟く。
敬愛してやまない我らがキャプテン。
若者特有のヤンチャ味が薄れてきて、元来物静かな方だが近頃は増して大人の男の魅力が出てきたキャプテン。
それが…
「シャチ達の言った通りだな…」
「あの人も人間にベタベタするんだな」
能力で飛ぶ直前まで何処かしらクロエに触れていたキャプテン。クロエの意識が自分に向くのが嬉しくてしかたがないという表情…
「可愛くてそんな姿もいーな」
「クロエに構ってもらってるキャプテンって幼く見えるな!」
何処までもキャプテン大好きなハートのクルーは今日もまた、キャプテン観察に勤しむのだった。