第5章 伍.来世に繋ぐ物 ※
三人で蝶屋敷を出て、の屋敷へと向かう。
の屋敷…か、もう俺の家と言ってもいいんだろうか。
「文通が大変になりそう」
そう嬉しそうに言いながら、見るからにルンルンとした気持ちで先を歩いていく。
その見慣れた後ろ姿に、様々な想いを馳せた。
初めて会った時からずっとこの後ろ姿を眺めていた。
まるでずっと追うように。
急にいなくなるときもあった。
あの時は相当つらかったなァ……。
風になびくあの髪が好きだったが、短くフワフワと揺れているのも悪くない。
「兄ちゃん、さんは何の料理が好きなの?」
「さァ…聞いたことねぇなァ」
ご飯を食べに行ったりはしていたが、好物までは知らなかった。
パンケーキやら甘味が好きなのは知っているが、料理はなんだろうか。
「さん!何が食べたいですか?」
「んーそうだなぁ……肉じゃが!」
「好物なんですか?」
「好物って言われるといっぱいありすぎて迷っちゃうんだよね…。
でも肉じゃがは好物の中のひとつだよ」
玄弥くんの手料理なんて嬉しいなぁとニッコリ笑うを見て、ほわっと顔を赤らめる玄弥。
「おい玄弥てめぇ変な気おこすなよ」
「起こすわけないじゃん分かってるよ!」
「ただの思春期でしょ?
玄弥くんにも好きな人いるかもしれないしね」
「……そうなのかァ?」
「え、いや、あ!そろそろ着くかな!」
露骨に話を逸らして見えた屋敷を指さす玄弥。
屋敷にはたくさんのひまわりが咲いていた。
「様!!」
「あれ伊藤」
「ずっとこの屋敷にいたものですから、ここに来て仕事をしてないと落ち着かなくて……」
「そっか……。わたしたち三人で暮らすことにしたから、その、嫌じゃなければこれからちょこちょこ来て玄弥くんのお手伝いしてくれたら助かるかな」
いいよね?と同意を求められるが、俺に断る理由はねぇし玄弥の負担が減るなら万々歳だ。
玄弥も嫌ではなさそうだな。
「お金ならあるしお給料もだす!どうかな!」
「え…逆に迷惑になりませんか?」
「迷惑になるはずかねぇだろォ」
「そうだよ」
「ありがとうございます様、風柱様…!」