第1章 壱.一目見たその時から
「オイ!あ?さっきまでいたよなァ?」
「ふふっ、不死川さんったら本当にさんのこと好きですね」
「はァ?好きとかじゃねェよ馬鹿かてめぇ」
甘露寺と胡蝶カナエの妹、胡蝶しのぶがこちらを見てクスクス笑ってやがる。
あれから2年。
胡蝶カナエは大怪我をし、引退して蝶屋敷で怪我人の看護に徹していた。
胡蝶妹が柱となり、甘露寺、時透が続いて柱になった。
煉獄とは仲がいいようだった。
どうやら煉獄の屋敷に居た時期があり、そこで呼吸法を一緒に学んでいたようだ。
だからあいつの呼吸は炎の派生になるんだろうと勝手に解釈している。
しかし腹が立つのは、の時透への溺愛っぷりだ。
むい、むいと呼んで自分の膝の上に乗せているところをよく見る。
「不死川、ならあそこの木にいるが」
そう言われてパッと見ると、ほらな、また時透と一緒にいやがる。
「オイ時透てめェ14で思春期真っ最中だろォ…
こんな子ども扱いされて恥ずかしがれよ」
「思春期…?」
「実弥さんもやってほしいんですか?」
「てめェぶち殺す…」
そしてさらに気に食わねェのが宇髄のやつだ。
恋愛感情はないにしろ、可愛がり方が別格なんだよあいつ。
の魅力……魅力っつーとなんか語弊があるな。
何となく人を惹きつけるというか、心を掴むのが上手だ。
「よォよォ、ここにいたのか!」
そう言って時透を膝に乗せているの後ろに座り、を挟むように足を広げ背中にピタッと密着して頭に顎を乗せる。
ほらほらこういうことすんだよ。クソ腹立つ。殺してェ。
「なんだ?実弥ちゃん派手に怖い顔してんぞー」
「さっきから怒ってるんです」
「あったかいなぁ…」
「嫁入り前の女に男ふたりがくっついてんじゃねェぞ…離れろォ」
「大丈夫大丈夫、なら俺が嫁にもらうから」
あ、殺そ…
そう思った瞬間遠くから!と煉獄の大きな声が聞こえる。
その声に気付いたは時透を膝から下ろし、宇髄の顎に頭をぶつけて煉獄の元へ走っていった。
「嫁には来なそうだなァ」
「あいつわざとやっただろ…舌噛んだわ。
その地味に勝ち誇ったような顔やめろ」